

本日もたくさんの古書、古本を買取させていただき誠にありがとうございます。
古本出張買取屋スタッフの後藤です。
皆さんは、藤田ミラノという人を知っていますか?
昭和30年代-40年代にかけて、雑誌『女学生の友』や『ジュニア文芸』の表紙や挿絵、
ジュニア小説『コバルト・ブックス』の作品の表紙などを多数手掛けた、
非常に人気の高い画家です。
昭和30年代、少女向けの月刊誌『女学生の友』は、
競合誌との差別化を図ろうと、別冊付録として小説をつけましたが、
藤田ミラノは藤井千秋・丸山ひでゆきらとともに、その表紙を数多く担当していました。
“日本の正統派美少女”のイメージの蕗谷虹児・高畠華宵、
モダンレトロなファッションと女性の美しさが目を引く中原淳一、
現代風かつ個性的な魅力で人気の松本かづち・内藤ルネ、
上に挙げた藤井千秋・丸山ひでゆき他、
抒情画家としてカテゴライズされる素晴らしい画家の中で、
私が1番好きなのが、藤田ミラノです。
その特徴は、少女や女性の美しさにあります。
細面に少し広めの額、大きな瞳。
ただ造作の整った顔というだけでなく、そこに聡明さ・凛とした女性の強さや気品が感じられます。
藤田ミラノの絵が当時多くの人に受け入れられたのは、美しさももちろんですが、
絵から感じられるそういった部分が、
戦後、女性が「男性の後ろで大人しくしていなければならない」存在ではなくなり、
「自己を主張していこう」という時代に変わってきたところにマッチしたというのもあると思います。
藤田ミラノの絵で好きなものは、挙げれば切りがありませんが、
女学生の友別冊付録、佐伯千秋『ふたつの愛』の表紙、
コバルト・ブックスの諸星澄子『めぐりあう星』の表紙、
コバルト・ブックスの中村八朗『高原の誓い』の表紙などは、
本当に素敵です。
中村八朗の『若草の愛をきみに』の表紙が、オードリー・ヘップバーンを彷彿とさせるといえば、
その美しさが伝わるでしょうか。
藤田ミラノの絵の中で最も好きなものは、私が一目見て心を奪われた、
コバルト・ブックスの川上宗薫『夏の日のかなしみ』の表紙。
作家としての川上宗薫も、作品の内容も好きなんですが、
この表紙が本当に美しいのです。
こちらを見つめる女性の、内面まで見通してしまうような視線の強さ。
顔に添えられた華奢な指、背景を飾る花の黄色の鮮やかさ。
何度見てもうっとりしてしまいます。
この表紙に関しては、ネットで調べてすぐにわかるようなものではないので、
気になる方には、藤田ミラノの経歴を追いつつその絵の美しさを堪能できる
『藤田ミラノ ヨーロッパに花開いた日本の抒情』という本をオススメします。
1ページ丸ごと使って『夏の日のかなしみ』の表紙(しかもカラー!)を載せているので
その素晴らしさがより伝わるかと思います。
ちなみにこの本は、巻末に藤田ミラノが絵を描いた雑誌や単行本のリストを
一覧にしてくれているので、ファンとしては本当にありがたいです。
藤田ミラノは様々な画風を持つ人で、
後年パリに渡ってからは、日本の時と同様の画風でパリの少女雑誌で活躍したり、
「恋するピエロ」や「花乙女」などのシリーズ物や神秘的な絵で、
ヨーロッパでも人気の画家となりました。
絵本では、また違ったかわいらしいタッチの子供や動物の絵で心を和ませてくれます。
2011年には、紹介した本のタイトルと同名の展覧会が東京で開催されましたが、
そろそろ次をやってくれてもいいのに・・・と思っているのは私だけではないはず!
(できれば巡回で、もちろん名古屋を入れて!)
全作品なんて贅沢は言いませんが、『女学生の友』や『ジュニア文芸』、
コバルト・ブックスのシリーズあたりでポストカードセットを発売してほしいです。
私は1万円出してでも買いたい!
そのポストカードをフォトスタンドに入れて部屋に飾るのが私の夢です。